目次
タートル チェア&テーブル
座り心地を追求したチェアとテーブルのセットが出来上がってきました!早々に写真をアップします。
開発のこだわりポイントは三つ、「低め」「板座」「肘付き」です。
そして、今回は「価格」にもコダワリました。
更には、体格に合わせて「セミオーダー」も可能です。
「低め」
一般的なテーブルの高さは70cmですが、タートルテーブルは65cmとかなり低い高さです。
リビング・ダイニング兼用のいわゆるLDスタイルで、食事だけでなくそれ以外の時間もくつろげる様にしました。
しかし、難しいのはそれに合わせる椅子の方です。
通常のダイニングチェアを低くしただけなら、膝下が余るだけで、けっして座り心地が良くなる訳ではありません。
低くして座り心地をよくする為には、座面と背板に角度を付ける必要があります。
その事により、座面に集中していた荷重を背板にも分散する事が出来、楽に感じる事が出来ます。
「板座」
「ラウンジチェア」や「イージーチェア」といったLDタイプの椅子の多くはクッション性の高い座面を採用しています。
当りが良くなるのは当然ですが、クッションにより適切な角度や形状に変形してくれるというメリットがあり、その事によりある程度の座り心地を保証してくれます。
しかし半面、「汚れる」「クッションがへたる」など耐久性のデメリットもありました。
当店で販売してきた椅子はどうだったかと振り返ってみると、圧倒的に板座での注文が多かったです。
それは、「良い物を買うのだから長く使いたい」という希望が強いのだと思います。
そこで、板座によるLDチェアの開発に挑む事にしました。
クッションによる誤魔化しが出来ない分、寸法は当然シビアになります。
椅子の開発はデザインから入るのが一般的だと思いますが、今回は座り心地重視の為、細かく寸法や角度を変更出来るシュミレーション用の椅子を開発する事から始めました。
このシュミレーション用の椅子を使って、最適な寸法と角度を独自に割り出し、その寸法を基にデザインを考え設計しました。
「肘付き」
スマホを利用するのに便利なのか、単に楽だからなのか、今は「肘付きの椅子」が流行っているように感じます。
有名でカッコ良い椅子はみな「肘付き」みたいな(笑))。
ただ、ダイニングチェアとして使うには、肘が邪魔で着座しにくいので、あまりお勧めはしていませんでした。
しかし、座り心地を追求する今回、肘掛けは外せません。
そこで、腕全体を支える「フル肘」ではなく、肘のみを支える「チョイ肘」を採用する事にしました。
これなら着座時にもさほど邪魔になりませんし、肩に掛かる腕の荷重分を分散する事ができます。
さらに、肘を載せても載せなくても良いように形状を工夫しました。
これらの工夫の結果、板座にもかかわらず抜群の座り心地を実現する事ができました。
ご来店頂き、ぜひお確かめください。
「価格」
いくら良い家具を作っても、買って頂けなければ意味がありません。
しかし、近年はなかなか思う様な価格で提供できない状況が続いていました。
そこで今回は開発の段階から、心理的抵抗線と考える「30万円」以内に抑えるという目標をたてました。
しかし「言うは易く行うは難し」で、コストを抑えながら価値観を高めるというのは、モノ作りにおいて相反する事柄です。
「そんな方法があるなら誰も苦労しない」というのが普通だと思います。
今回は三つのコダワリポイントを追及しつつ、材料と手間を極力はぶく設計をする事でコストを抑えました。
また、30万円以内に抑えるという目標の為、テーブルと椅子のセット販売限定としました。
(まあ、高さが特殊なので、別々に販売するケースもないでしょう。笑)
LDテーブル外形寸法 W1600 D800 H650
セット価格 ¥306,000 (税込価格)
使用材料 ホワイトアッシュ 無垢材
塗装 美白色 ウレタン塗装
外形寸法 W600 D556 H755 SH405
価格 ¥37,000 (税込¥40,700)
使用材料 ホワイトアッシュ 無垢材(座板・背板は成型合板)
塗装 美白色 ウレタン塗装
※受注生産の為、テーブルのサイズや材種・色を変更して作る事も出来ます。(別途見積もり)
(資材価格の高騰により、価格が変更になる場合があります)
「セミオーダー」
タートルチェアは体格に合わせて寸法の調節が可能です。(※一部の寸法に限ります)
普通、椅子はさまざまな角度の部材を組立てて作る為寸法の変更は容易にはできません。
椅子の場合、オーダーで作る事はもちろん、セミオーダーも出来ないのが一般的だと思います。
せいぜい脚の先をカットして低くする事くらいです。
タートルチェアは座面と背板の角度以外は全て水平・垂直の部材によって構成されています。
その為、他の椅子と違って寸法の変更が容易なのです。
タートルチェアは日本人の平均的な身長に合わせて設計していますが、身長よっては座り心地の良さを実感出来ない場合があります。
特に小柄な方は、座面の奥行きを短くする事で劇的に座り心地が良くなります。
座り心地の秘密を更に解説
背板の位置が高い椅子の場合
座板と背板に角度を付けた椅子の場合、図-Aの様に背板の下端が高い位置にあると、上体を安定的させる事が出来ず、腰が丸くなってしまいます。
その結果、座骨から尾てい骨の間の狭い範囲に上体の荷重が掛かる形になります。
しかも荷重は座面に対して斜め前方向に向かうので、お尻が前に滑る感覚を受けていまいます。
タートルチェアの場合
タートルチェアは、図-Bの様に背板の下端が低い位置にくるように設計しました。
腰骨をしっかりサポートする事が出来るので、骨盤がクルっと回転し、背骨のS字を維持する事ができるのです。
骨盤が回転し、座骨が真下を向くように座ると、上体の荷重は座骨から太ももにかけての広い範囲に分散させる事ができます。
また、座面に対して垂直に荷重が掛かるので、板座であっても「尻スベリ感」を感じません。
タートルチェアは食事だけでなくそれ以外の時間も長くくつろげる事を目的として開発しました。
食事をする事を考えると、座面はフラットに近い方が良いですが、くつろぐ為には角度が必要です。
食事ができて、なおかつ座り心地の良さを実感できるギリギリのバランスを見つける事が重要でした。
座ってみました
上体が十分に傾斜しながらも、S字を維持しているのが分かるでしょうか。
骨盤が立った状態なので、上体の荷重が垂直に座面に伝わっています。
写真のモデルは作者自身ですが身長は164cmです。
わりと小さいですね、子供の頃はいつも前から2番目でした。
背が低いのはコンプレックスでしたが、この仕事についてから考えが変わりました。
実は、日本人の男女合わせた平均身長が大体この位なのです。
つまり、私が心地よいと思う椅子は、平均的な日本人にとって心地よいと言えるのです。
この身長って才能だったんですね。
肘掛けについて更に詳しく
正面から見た画像です。
肘掛けの高さは、「高過ぎず低過ぎず」が理想です。
開発においては、肩に負担が掛からない最適な高さと位置は何処か?シュミレーション用の椅子の設定を細かく変えながら検証しました。
とは言え、真下に下した状態で肘がピッタリ載る高さというのはかなり微妙です。
肘の高さは、(座面から肩の高さ-肩から肘までの長さ)によって決まりますので、個人の体格差によってかなり変わってきます。
そこで、腕の開き角度によって高さの誤差を解消する事にしました。
下図はその様子を表現した模式図です。
図の様に、腕を外側方向に開くと自然と肘の位置は高くなります。
肘の載る部分を外側方向に広げる事で、意識せずとも高さの調整が自然と図れるようになっています。
肘掛けがある事で、窮屈に感じるのは嫌だったので、肘掛けは使用してもしなくても良い形状を考えました。
肘が短く、ゆったりとしたカーブなので、肘掛けを使わない状態で座っても窮屈さを感じません。
そして、もう一つ注意した点があります。
皆さんは、肘の内側のスジの部分をぶつけた事はありますか?
ココ!めっちゃ!痛くないですか。
何とか、ここがぶつからない様に出来ないか?と考えました。
肘の外側が肘掛けに当たる分には良いのです。
でも、この先端の部分が危険そうですよね。
でも、離れた位置にあるので・・・、
当たらな~いのです‼
デザイン
「見た目良く、なおかつお安く」
肘付きのカッコ良いダイニングチェアのひとつの理想形は、ハンス-ウエグナーの「ザ・チェア」の肘と背板が一体化したスタイルですよね。
多くの家具デザイナーやメーカーさんが挑んでいます。
しかし、このスタイルは材料を多く使って削り出すので、材料費も加工費も多く掛かってしまいます。
カッコ良いけど手が届かないでは意味が無い気がします。
そもそも、今回は座り心地を追求する為、背板の位置を低くする必要があり肘の高さと揃いません。
真似したくても無理でした。
椅子の設計はデザインから入るのが普通だと思います。
「如何に魅力的なデザインを考えつくか」が一番難しいからです。
でも今回は、「低くて・板座で・短い肘付き」と言うコンセプトが最初にありましたので、まずは座り心地の良い角度と寸法を決める事にしました。
その為には、座面・背板・肘の高さや長さ角度などの設定を細かく変更してシュミレーション出来る椅子(器具)が必要で、まずはその開発から行いました。
これ、いざ作ろうと考えると結構難しいんですよね。
(どんな方法の器具かは、真似されたくないので企業秘密です。)
しかし、見つけた「理想の寸法」この条件を全て満たした形を考えるのも簡単ではありませんでした。
背板の傾斜角がキツイので通常のダイニングチェアよりも奥行きが深くなりがちで、違和感の無い形に纏めるのは難題です。
素直に設計すると、前後に長~い一人掛けソファのような椅子になりかねませんでした。
更にそこに短い肘も取り付けなければならず、連立方程式を解く感覚です。
アレコレと悩んだ結果、シンプルな板状の垂直脚に、背板と肘を一か所で固定する方法を思い付く事で見事に解決しました。
同時にとても簡素な構造にする事が出来たので、目標としていたコストの削減も達成する事ができました。
「シンプル・イズ・ベスト」単純だからこそ見飽きる事もない、と思います。
無垢材のダイニングテーブル
テーブルのデザインは極力シンプルにしました。
このタートルテーブルのコンセプトは、低いテーブルである事と無垢材で作る事。
なので、それ以外の部分は極力コストの掛からない形を選びました。
おそらくこの形が一番お安く作れる形だと思います。
材料にはホワイトアッシュを選びました。
天板の厚みは27mm。
野球のバットにも使われるくらい丈夫で、自然味のある木目が楽しめる材料です。
四隅に配置した脚部は、着座し易いように、奥側に下げています。
ただし、側面側でも椅子を収納出来るように脚間隔を設定しています。
この椅子に座っていると、やっぱり座り心地の良い椅子が一番なんじゃないと思います。
ずっと座っていられますし、テーブルも低いので部屋も広く感じられます。
背中が椅子に貼り付くようで、立つのがチョット億劫になるかもしれません。
セールストーク
低めのダイニングテーブルのメリット・デメリット
ダイニングテーブルを低めにするメリットとデメリットを私なりに考えてみました。
メリット
① 高さが抑えられる事で、部屋が広く感じられる。
② 目線が低くなるので、落ち着いた雰囲気になりリラックス出来る。
③ リビングとダイニングとの高低差が小さくなるので、お部屋の一体感が増す。
④ ダイニングでくつろげるなら、リビングに置くソファを省略する事が出来る。
(リビングからソファを無くして床座の環境にしたとしても、ダニングテーブルが低ければ床座との親和性が高くなる)
デメリット
① 一般的な高さのテーブルの方が、天板面が顔に近い分、食事や勉強などの作業性が良いといえるでしょう。(但し、お子様にとっては低い方が体に合う場合もあります)
② 椅子のデザインとしては、座面が高い方がスマートに見えます。見た目のデザインに拘りたいのなら普通の高さで考えた方が良いかもしれません。
③ 椅子の大きさが大きくなりがちなので、ダイニングスペースをコンパクトにまとめたいとお考えなら向かないかもしれません。
と言った所でしょうか、よく検討して自分達に合った高さを選択してください。
ソファダイニングとの比較
同じ低めのテーブルと言う事で、人気のソファダイニングとタートルチェア&テーブルを比較してみたいと思います。
ソファダイニングとは、文字通りソファの前にダイニングテーブルをセットして使うスタイルの事です。
こちらも、くつろぐ事に重点を置いている為、低めのタイプが多いです。
① 木製なので布が傷んだりしない。
(ネコちゃん・ワンちゃんを飼っていて、ソファや椅子が傷んで困っている方にはメリットではないでしょうか。)
② ソファダイニングは移動させるのが大変なので、掃除がしづらい点がデメリット。
③ ソファタイプの椅子には、奥に座った人が出づらいというデメリットがあります。
④ タートルチェアなら向きを変えて座る事が出来るので、テレビを見たい時にはそちら側に向きを変えて見る事ができます。
フレキシブルに対応できるメリットがありますね。
⑤ タートルチェアなら、一脚ずつに肘掛けが付く。
如何でしょう? セールストークですが、説得力ありませんか。